今週の名盤〜第1回 定盤と新たな発見と
今週の名盤は、以下に挙げる7組。順次ご紹介していきたい。クライバー、ブッシュ弦楽四重奏団は、定盤だが、シュタインバッハーのような新たな名盤も発見し、狂喜乱舞している。
① ミケランジェリ&ジュリーニのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番 ドイツ・グラモフォン 1979年
ジュリーニ目当てで買ったCDの中に収録されていたが、思わざる拾い物。ミケランジェリの金ピカの音色が素晴らしいし、交響曲指揮者とオペラ指揮者両面の性格を併せ持つジュリーニの伴奏も天下一品。
ドイツ・グラモフォン 1974年
楽天的、響きが明るすぎ、と思うが、これほどオケ、そして聴き手を巻き込む能力のある指揮者はあとにも先にもいないだろう。クライバーには、スタジオで4番も録音して欲しかった、と思うのは贅沢だろうか。古典的名盤。
旧EMI 1966,67年
今年没後50年のイギリスの名指揮者の遺産から。ブラームスの交響曲全集本編ももちろん素晴らしいが、付録の管弦楽曲、《ハイドン変奏曲》《大学祝典序曲》《悲劇的序曲》、いずれも名演である。ブラームスのノスタルジーが散りばめられた《悲劇的序曲》が中でも素晴らしい。これほどブラームスに共感し、慈愛に満ちた演奏はそうそう聴けないだろう。オケはウィーン・フィルである。
④ ブッシュ弦楽四重奏団のベートーヴェン:弦楽四重奏曲第9番 旧EMI 1933年
どうしてそんな古いものを、と顰蹙を買うかもだが、90年の時を超えて心の音楽が伝わってくる。緊張感に満ちていながらも、精神を落ち着かせてくれる、魔法のような演奏。古い録音を聴かないという方も含め、是非とも耳を傾けていただきたいが、現在品薄の模様。
⑤ カラヤンのホルスト:《惑星》ドイツ・グラモフォン 1981年
7月16日はカラヤンの命日だった。そのカラヤンの至芸を目一杯堪能できる名盤は、こちら。ベルリン・フィルの重戦車のような低音、歯切れ良い弦楽アンサンブル、どんなに咆哮しても音が濁らない金管の洗練度、脱帽である。
旧フィリプス 1969年
コンセルトヘボウとの全集からの1曲。木管楽器の歌心や、弦楽セクションの切れの良さ、繰り返し聴きたくなる。重心が低く、安定感抜群。噛めば噛むほど味の出る演奏だ。タワーレコードから復刻版が出ている。
⑦ シュタインバッハー&デュトワのメンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 PENTATONE 2014年
最新盤で、とんでもない名曲の名盤を見つけた。3月に読響で聴くはずだった、シュタインバッハーのメンデルスゾーン。全編哀感の支配する、メランコリックな名演。祈りに包まれており、心が洗われるような演奏。この名演を耳にすると、生で聴きたかったと歯軋りするばかり。